5月3日(金)
朝7時、ホテル前でガイド氏と待ち合わせて、レンタカーを一旦ガイド氏宅に預ける。
連泊しようと思っていたら、祝日とのからみで同じホテルが押さえられず、やむなく近くの別のホテルに泊まることになったのだが、チェックインまでの車の扱いに困っていたところ、ガイド氏が気を回してくれた。
最初に着いたのは、いわき中央I.C.近くにある吊り橋周辺。
橋には「老朽化しているため、少人数で渡るようお願い致します」の立て看板があった。
川の様子を見るため、中央あたりまで渡ってみたが、確かにゆらゆらして不安定ではあるものの、作り自体はしっかりしていた。
かつてこのあたりは炭鉱で栄え、積み出し用の専用線まで走っていたそうだが、70年代のエネルギー転換期に閉山となったらしい。
そして原発誘致という流れ。
下北半島と同様に、この土地もまた昔から、国のエネルギー政策に振り回されてきた。
川の水は代掻きの泥によって白く濁っていて、風も相変わらず強く気温も低めながら、虫たちは活発に飛んでいる。
川底は砂の間に石がある感じで、「ヤマメは砂を釣れ」の言葉がそのまま生きる川相。
アシの際や流れ込みの石の裏、泡の筋を狙ってキャストしていくものの、久々のこともあってなかなか勘が戻らず、よたよたと足元を気にしつつ、川の中まで茂るアシに引っ掛けたり、ウィンドノットを作ったりで、釣っている時間より解いている時間のほうが長い…。
ガイド氏は20ft超のロングリーダーを駆使して、テンポよくポイントを探っていく。
アタリもなくライズも見つからないため、しばらくして場所変えとなったが、後日ガイド氏の送ってきたメールによれば、この橋の下だけで短時間に8匹のヤマメが出たそうだ。
次に訪れたのは、国道49号線の水石トンネル近く。
上流に発電所があるので水量は少なめだが、先ほどの場所より風もまだマシで、上流が渓谷で田畑から離れていることもあり、いくらか水は澄んでいるし、虫も相変わらずたくさん飛んでいる。
ガイド氏にも自分にも、ここでは小型ながら反応があった。
しばらく釣り上がってみたものの、その後は反応が薄く、さらに移動していわき三和I.C.近くへ。
ガイド氏の息子さんが早朝からルアーでこの周辺を狙っていたが、風と寒さで撤退したとのこと。
こちらは谷間の開けた場所だけあって風の影響が強く、自分の腕ではキャストどころじゃないが、ガイド氏は対岸のアシ際からあっさり一匹釣り上げていた。
やはり腕よなぁ…と思っていると、対岸のアシ際で反応が。
あわててキャストしなおすと、きっちり対岸のアシに引っかける…ポイントが潰れました orz
正午のサイレンが鳴ったので、国道沿いにある食堂で腹ごしらえをした後、車でさらに小移動して、少し上流の合流ポイントへ。
このあたりでようやくキャストも安定しはじめたものの、やはり強風で煽られる。
いざという時のロングキャスト用にとWFを使っているが、自分の腕ではそれが間違いなのかも。
とはいえ代掻き水が流れ込む場所を過ぎ、水が透明になってくると、ライズや反応が明らかに増えてきた。
田畑の作業は午前中に済ませることが多いので、泥が落ち着くと水は澄み始める上、田んぼで暖められた水が水温を押し上げるので、昼からの方が良い結果になることも多いそうだ。
事あるごとに萎えそうな自分に気合を入れなおし、再びキャストを繰り返すと…目の前でライズ。
「バカにしくさって…」
ムキになってキャストすると、案の定また変なところに引っ掛けてポイントが潰れた。
…そらバカにされるわ。
まだ釣りの真っ最中なのに、しきりにリベンジを口にし始める自分。
いいからとりあえず落ち着け。
次に、三和中学校前の流れへ移動。
学校への橋の下がちょうど淵になっていて、泡の筋から反応があったものの、取れない…。
ヤマメの鋭い反応に全くついていけない。
魚は確実に、しかも思った以上にたくさんいる。
水温も上がってきたし、虫もたくさんハッチしている。
腕か。 わかっちゃいたけど腕か。
「やっぱりイワナのほうが好きやな…」とひとりヘタれてみる。
ちなみに好間川は上流部に至るまで典型的な里川で、イワナはあまり見かけないとか。
さらに少し上流へ移動し、国道脇のスプリングクリーク的な流れに。
川に近づくと、ボコンと大きな音をさせながら、いかにも型の良さそうなライズリングが見えた。
静かに上流から流し込もうとすると、目前のアシ際でチビが連続アタックをかまして沈めてくれた。
「ちょ…邪魔すなコラ…」
流れが遅く、ライズのところへたどり着くころには、フライは完全に沈んでしまっている。
しかもそれを3回きっちり繰り返してしまう。
…テンドンは三回って言うけど、それを釣りでやってどうすんねんという。
大慌てでソフトハックルを結びなおし、流し込んでみたが返答はなかった。
大型どころか途中のチビすら取ることができず、肩を落として上流へ向かう。
例によって反応はあるのだが乗らない、いや乗せられない。
やがて堰堤が見えてきたので、落ち込みを集中的に狙う。
何度か流し込んだとき、ヤマメの尖った頭がフライを押さえ込んだ。
一瞬だけ魚の重みを感じたが、咄嗟のことに反応できず、またもや力なく垂れ下がるティペット。
「今のは…今のは取らなあかんやろ…」
がっくり膝をつき、思わず悔しさが口を突いて出る。
「堰堤の上でも反応ありますから、がんばって」とガイド氏に激励され、気合を入れなおす。
こちらが堰堤下で悶絶している間に、ガイド氏は一匹ヒットしたようだ。
確かに反応はそこらじゅうであるが、相変わらず乗せられない。
やがて試合終了のホイッスルのように、谷あいに「夕焼け小焼け」のメロディーが。
「あれだけ反応があったのに丸坊主…ッ! 完全試合…達成…ッ!」
がっくし。
帰りがけ、先ほどのライズポイントに目をやると、相変わらずライズリングが広がっていた。
(一枚も写真がないあたりで、いかにいっぱいいっぱいだったか読み取っていただきたい…。)
「長いことこの川で釣りしてますけど、今日ほど厳しい日も珍しい」とはガイド氏の弁。
…いえ、取れる魚を取れなかったのはひとえに自分の腕なので、お気になさらず。
途中ガイド氏は山菜を取っていたらしく、腰のビニール袋はパンパンに。
「"アレ"が気になるなら勧めませんけど、うちでちょっと食べていきませんか?」と夕食のお誘いがあったので、自分は昔からタバコ吸いの酒飲みですからと、遠慮なく頂くことにした。
ホテル泊まりの一人旅、しかも現地の人でさえ地場産を避けたりするこの状況では、採りたての山菜なんてとても無理だろうと、半ば諦めていたところだった。
ガイド氏は日ごろから検査場への持ち込みも行っているというが、山菜なんてシーズン通したところで何キロもばかすか食うようなものではないので、多少数値の高いものに当たったところで問題とは思えなかった。
車ということもあり、ノンアルコールビールで乾杯。
山菜以外にもテーブルいっぱいの刺身や揚げ物を頂きながら、色々と話を聞いた。
好間川など夏井川水系や、隣の鮫川水系などは、水試の検査でもNDの報告が上がっているのだが、エサ釣り師は激減、少しでも客を呼び戻そうと、漁協が協力して年券が両方の川で使えたり、一年分の料金で来年も引き続き使えるようにしているそうで、また若手からはC&R区間設置の話も持ち上がっているらしいが、まだまだ漁協の動きは鈍いとか。
地元の揖保川あたりなら解禁直後にほとんど釣り切られてしまい、よほど源流部まで踏み込まなければ盛期までアマゴが残っているほうが珍しく、行ってもせいぜいアブラハヤやカワムツしか釣れないことを考えれば、釣獲圧の影響がいかに大きいかよくわかる。
昨日通り過ぎた請戸川など太平洋側の河川では、川を横断していたヤナが軒並み破壊されたことで、かなり上流部までサケやサクラマスが遡上し、自然繁殖も例年より多く確認されたとか。
仙台市内のフライショップでは、昨年は側溝のような川にまでサケが遡上していたとも聞いた。
有志放流でかろうじて維持されてきた某小河川などでは、昨年の試し釣りで素晴らしい太さのヤマメがばんばん釣れたんだそうで…元々小さい川だったこともあって、噂が広まった途端に釣り切られてしまったらしいが。
山菜も問題ない線量の地域であっても取る人は少なく、コゴミなどは足の踏み場もないくらい河原に生えていたし、作付けが行われている田んぼの土手に生えたものも、ほとんど取られた様子がなかったり、道沿いに生えたタラの芽など、いつもなら真っ先に取られてしまうはずのものが、そっくりそのまま残っていたりする。
ガイド氏と「今の状況の方が自然には"やさしい"んじゃないか」と苦笑した。
話が弾んでホテル入りが遅くなってしまったので、お礼もそこそこにガイド氏宅を後にした。
ある程度泥や汚れは落としていたものの、ウェーダーとウェーディングシューズは水を吸い、結構な重みになっている。
土産など今までの買い物でバッグは既にパンパンになっていることもあって、ウェーダー類や一部の釣り道具はジップロックで完全密封の上、宅配で送り返すことにして、帰り支度もそこそこに、疲れもあって早めに寝た。