5月2日(木) 後半
国道6号を南相馬まで戻り、道の駅南相馬で、草もちにドーナツ生地をかけて丸く揚げた「凍天(しみてん)」を昼飯代わりに買う。
凍天売り場のカウンターには、見本用に揚げたてを二つに割って置いてあったのだが、それをキセキレイが持ち去ろうと一生懸命引っ張っていたので、一喝して追っ払った。
食べてみると中のもちはやわらかく、生地の甘みもほど良く、思ったより油っこくなくて、なかなか美味しかった。
県道268号を真野ダムへ向けて走ると、栃窪の集落あたりから真野川が道に沿って流れるようになるが、事実上の禁漁になっているので、当然釣り人の姿はない。
スモールが繁殖しつつあるとはいえ、本来であればヤマメの川らしく、いい感じの石。
ダムサイトを越えると飯舘村に入る。
水面を見ると想像していたイメージより大規模なダムだった。
しばらく走ると帰り支度をする釣り人の姿が見えたので話を聞いた。
今日は風が強くて風裏を探して釣ったが、小さなワームでネチネチしないと反応がないとのこと。
…お天気おねーさんめ。
スロープのあるインレット方面を目指してさらに進むと、数人のバサーがいた。
「今日は三匹ほど」
申し合わせたように全員がスピニングに小さなワームをセットしたタックルを持っていた。
相変わらず風は収まらず気温も低いままで、こりゃ思い出作りなんて無理だなと感じつつも、インレットの方を目指してぬかるみを越え、藪をかき分けて進む。
線量は藪の中や窪地のほうが高いそうだから、きっと計測値より高い値を浴びてるんだろうなーと思いながらも、ぶっちゃけ吸い続けているタバコのほうが、よほど体には悪い。
しばらく釣りをしたが当然というかやはり反応はなく、寒さと風でモチベーションが落ちてきたので、スロープに戻ってしばらくキャストした後、道具をたたんだ。
スロープ脇の駐車場を出て、つづら折りの道を登っていくと、サルの群れが木の上でしきりに何かを食べていた。
人慣れしているのか、こちらに気付いても警戒するような様子は見えなかったが、車を止めて写真を撮ろうとしたら、めんどくさそうに木々の向こうへ消えてしまった。
…アイソないなおまえら。
峠を越え、マタタ川とという不思議な名を持つ川沿いを進むと、道沿いに見事な桜。
沿岸部に比べて建物に地震の影響はほとんど見られないが、このあたりは今回通過するコースの中でも特に線量が高いエリアで、さすがに周囲に人影はない。
やがて県道12号線に合流、川俣町方面へ向かうと、周囲に「除染作業中」の立て看板が目立つようになってきた。
相双地区から中通りに抜けられる数少ない道のひとつなので、交通量自体は比較的多い。
そのうち道は下りになり、川俣町の飯坂集落あたりまで来ると、田んぼは代掻きが始まっており、下校中の子供たちや、それを迎えに行く親の姿が目に付くようになった。
放射性物質の拡散はひとえに風向きの影響だけなんだそうで、風裏にまわってしまえば、わずかな距離の間でもこれだけの違いが出てしまう。
逆に風の気まぐれで吹き溜まりができると、妙なところがホットスポットにもなったりする。
川俣町で国道349号線に入り、道の駅で休憩しながら、田村方面へ進む。
本当は尻Pがかつてイワナを釣った千扇川を覗いたりしながら、川内村方面へも回りたかったのだが、いわき市内での混雑や、"酷道"399号線の話、いわきの釣具店へ寄る時間を考えると、どうしても時間的に厳しくなってしまったので、そのまま船引三春I.C.から磐越道に乗り、いわき市へ向かった。
いわき中央I.C.で降りると、国道49号線との合流部分の橋で、翌日釣りをすることになる好間川(よしまがわ)の下流を渡る。
浪江町から国道6号をそのまま行けば2時間かからず到着できる距離を、阿武隈山地の大迂回で、おおかた5時間かかってしまった。
車の窓を開けると、相変わらず風は強いものの、相双エリアより気持ち暖かく感じる。
国道49号線から再び国道6号線に入るあたりは、さすがに市内だけあって混んでいた。
いわき駅方面へ曲がり、目指していた釣具店へ向かう。
店のサイトから明日のガイドをお願いしたので、勝手に店主が案内してくれるものだと思い込んでいたのだが、実際には店の常連さんとのことだった。
勘違いを詫び、小物や巻き足りないパターンをいくつか買った後、ガイドをお願いする方へ連絡を取ってもらい、明日の予定を決めてホテルへ向かった。
ホテルはいわき駅のすぐそばで、チェックインを済ませて部屋に入り、晩飯のためにあれこれ検索をかけてみたが、やはり地域の食材に規制がかかっている(青物は問題なしだが、塩竈でさんざん食ったし…)のもあって、ピンとくる店がなかったので、適当に当たりをつけた洋食屋で軽く食べたものの、なんとなく物足りなくてホテル近くの焼鳥屋へ入った。
とりあえず地酒と焼鳥の盛り合わせを頼み、メニューを見ると「メヒカリの唐揚げ」があった。
関西ではあまり馴染みのない魚なので、頼んでみることに。
揚げたては白身がホクホクして、頭からバリバリ食える小骨の少ないトラギスという感じで、なかなか美味しい。
いわき市では「市の魚」としてPRに余念がないようだが、少し前までは市場でも捨て値で売られ、子供におやつ代わりにされるような存在だったそうな。
webを検索してみると、生態もトラギスに近いようで、トラギスと混同されて売られることまであるようだ。
部屋に戻るとガイド氏からメールが入っていた。
「寒さと代掻きの濁りで状況は厳しいですが、一生懸命ガイドさせて頂きます」
…はい、それに応えられるよう、こちらも頑張ります。
なにより明日もし坊主なら、この旅行『完全試合達成』なんで…。
てか、代掻きの有無がこんなところで影響してくるとは思わなんだ…。